経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は、100%を上回っているものの、平成27年度から落ち込み、類似団体と比較して低い水準にある。また、平成26年度における⑤料金回収率は114%であったが、平成27年度から100%を下回り、給水にかかるコストが水道料金収入で回収できていない状況となっている。これらの主な要因は、平成27年度から、新水源である千歳川系の受水費支払いが始まったことによるものである。なお、本市水道事業の⑥給水原価は、類似団体と比較して高い状況であるが、短期的な経営努力によってコスト削減が難しい「受水費」と「減価償却費」の2経費で給水原価の約71%を占めている。②累積欠損金については、昭和63年度に市の財政支援により解消して以来、発生していない。③流動比率は、極めて良好な数値であり、短期的な債務に対する支払い能力については、全く問題がない。④企業債残高対給水収益比率は、昭和57年度から平成5年度までの間と平成21年度以降において、企業債の発行を行っていないことから、類似団体と比べて突出して良好な数値となっている。⑦施設利用率については、平成28年度から急落しているが、この要因は、平成28年7月から千歳川系の受水が始まり、配水能力が2,800㎥増えたことによるものである。原水の異なる2系統(漁川系、千歳川系)の受水は、災害時において極めて有効ではあるが、反面、平時の水需要に対しては、施設能力が過大となっていることを示している。⑧有収率は、計画的に老朽管更新事業を実施している効果もあって、平成27年度までは90%以上を維持してきたが、平成28年度は90%をわずかに割り込むこととなった。漏水の増加が要因だが、漏水には利用者の私有財産である給水管からのものも含まれており、適切な維持管理について啓発を行う必要がある。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率については、年々上昇しており、施設の老朽化が進んでいることを示している。資産の種別ごとでは、配水管等の構築物は40.12%と低いが、建物は52.09%、機械及び装置は66.19%と高くなっており、今後、計画的な施設更新が求められる。②管路経年化率が上昇傾向にあるが、この主な要因は、大型団地造成時に布設された配水管が耐用年数を迎え始めていることによるものである。③管路更新率は類似団体平均を上回っているものの、1%を割る数値となっている。これは、更新を全て終えるまでに100年以上かかる計算となり、アセットマネジメントにおいて設定した目標耐用年数(60年)を越えていることから、今後、更新率を上げる必要がある。
全体総括
上述のとおり、平成27年度から新水源にかかる受水費の支払いが発生したことから、経営指標が一気に悪化した。今後、給水人口の減少などに伴い、水道料金収入が減っていくことは必至な状況であり、一方で水道施設の大規模更新時期の到来や災害時に備えた水道施設の耐震化など、多額の費用が見込まれていることから、平成29年度に策定した経営戦略に基づき、さらなるコスト削減、効率的な施設投資など、より一層の経営努力を続けていく必要がある。