地域において担っている役割
福岡市における医療施策として求められている救急医療、高度専門医療等を提供すること等により、市内の医療水準の向上を図り、もって市民の健康の維持及び増進に寄与する。
経営の健全性・効率性について
健全性・効率性について、県のCOVID-19重点医療機関として、許可病床数の27.9%をCOVID-19専用に確保し、中等症以上を中心に患者を受入れたことから、病床利用率は低下し、また一時的な手術制限や、患者の受診控え、救急搬送の減少等により、医業収益・医業収支比率ともに前年度より悪化した。しかし、類似病院平均値と比較し、ほぼすべての指標で高い水準となっている。特に入院単価は、COVID-19特例措置による診療報酬加算を除いても70,000円を超えており、COVID-19対応を継続しつつ、新たな手術手技の導入にも取り組む等、通常医療を途切れさせなかった成果である。また、材料費対医業収益比率については、コロナ補助金により収益が大幅増となったため、結果的に類似病院平均値並となった。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率については、平成元年4月竣工から30年余が経過し、減価償却も進んだことから、類似病院平均値と比べて高率であり、また同平均値との乖離が年々拡大していたが、電子カルテや心カテ装置等高額機器の更新を行ったことにより、依然、同平均値よりは上回っているものの、直近5年間で初めて減少した。また、器械備品減価償却率については、近年類似病院平均値より上回って推移していたが、有形固定資産減価償却率と同様に初めて減少した。なお、1床当たりの有形固定資産については、類似病院平均値よりも低額で推移している。
全体総括
COVID-19禍という特殊な状況でありながら、経営の健全性・効率性を表す指標は、類似病院平均値と比較すると概ね良好に推移している。しかしながら、COVID-19の影響による患者数減少の回復や、材料費比率、給与費比率の適正化など、COVID-19後の経営改善において取り組むべき課題は多い。また、地域医療構想及び医療計画において求められる高度専門医療並びに救急医療体制を提供するために必要な取組を継続して行うとともに、災害や新型コロナウィルス感染症等の新興感染症の発生、その他の緊急時には、事業継続計画(BCP)に基づき、福岡市及び関係機関との連携の下、市立病院として求められる役割を果たす必要がある。