経営の健全性・効率性について
【①経常収支比率,②累積欠損金比率】経常収支比率は,豪雨災害があった平成30年度を除き100%を上回っており,累積欠損金はない。【③流動比率】流動比率は,全国平均を下回っているものの100%を上回っており,短期的な支払能力は確保している。【④企業債残高対給水収益比率】企業債残高対給水収益比率は,給水区域が広範囲で多額の更新投資を要することから,類似団体平均値(以下「平均値」という。)を上回っている。【⑤料金回収率,⑥給水原価】豪雨災害があった平成30年度を除き,他の事業(水道用水供給事業,市町水道事業)に係る維持管理費を除いた工業用水道事業のみの料金回収率は概ね100%を維持しており,令和2年度は111.78であった。なお,左表では,料金回収率は100%を下回り,給水原価は平均値を上回っているが,要因は,この分析表の算出方法では,給水原価に工業用水道事業が一括して実施している他の事業に係る維持管理費が全て含まれている一方,他事業から得た維持管理費分の収益が含まれておらず,費用が過大となっているためである。【⑦施設利用率,⑧契約率】施設利用率は平均値を上回っているが,令和2年度に受水団体の増量計画に対応して施設拡張を行い施設能力が高まったが,受水団体の増量が計画の途中であることから,施設能力の拡張に比して使用水量が増加していないため,令和2年度は前年度を下回っている。契約率は,事業開始時に見込んでいた用水型企業の立地が進まなかったこと,受水団体の減量により当初の計画水量まで水需要が伸びていないことから平均値を下回っている。また,平成30年7月豪雨に伴う受水団体の被災により契約水量が一時的に減少したため低下していたが,令和元年度以降は回復している。
老朽化の状況について
【①有形固定資産減価償却率】有形固定資産減価償却率は,平成29年度に大型工事が完成し施設の老朽化率が低下したことにより,平成30年度以降は平均値を下回っている。【②管路経年化率,③管路更新率】管路経年化率は平均値を下回っているものの,昭和30年代後半から40年代に布設した管路が多く,優先度の高い管路から順次耐震管に取り替え,管路更新を進めている。なお,管路更新率に各年度で変動があるのは,複数年度にわたる工事を行っていることが要因であり,令和元年度及び令和2年度は,完成した工事がないため0%となっている。
全体総括
経営の健全性・効率性については,経常収支比率は100%を上回っているが,企業債残高対給水収益比率及び契約率はいずれも類似団体平均値に達していない。今後は,大口受水団体の受水量減量に伴う給水収益の大幅な減少や施設の老朽化による更新費用の増加に伴い,厳しい経営状況となることが見込まれる。このため,健全な経営を維持する観点から,更新投資の平準化や施設の最適化を進め,経営の効率化を図る必要がある。