経営の健全性・効率性について
【経営の健全性】H29は中堅職員の配置による人件費の増加等で①経常収支比率が100.51%と悪化したが、②累積欠損金比率は0%で健全性は維持している。これらはH26の会計制度見直しで計上が義務付けられた営業外収益「長期前受金戻入」(減価償却費見合いの補助金等の非現金収益)による黒字であり、実質的な営業収支は給水収益(水道料金)の低迷により赤字で推移していることに注意が必要である。また、短期債務の支払能力を表す③流動比率、借入金の規模を表す④企業債残高対給水収益比率は類似団体の平均値に比して健全性を維持しているが、建設改良事業の進捗に伴う流動資産(現金)の減少や企業債(負債)の発行増で悪化が避けられない見通しである。給水収益と給水費用のバランスを表す⑤料金回収率は、H26の会計制度見直しに伴う⑥給水原価の算定方法の変更で一時的に上昇したが、今後は給水人口減少等による収益低下で悪化が見込まれる。管路・施設の老朽化対策に多額の現金を要し起債が不可避な状況から、料金改定等の財源確保と経常費用節減との一体的な収支改善の必要がある。【経営の効率性】大口需要者の使用水量が大幅に減少したH22以降、⑦施設利用率の低迷が続いており、人口減に伴う水需要の減少見込みに応じた施設規模の適正化を進め、また、総配水量に占める収益分量の割合を表す⑧有収率も平均値を上回っているが、管路の老朽化による漏水等を未然に防止し、無駄の排除と効率化に努める必要がある。
老朽化の状況について
償却対象資産の老朽化度合を示す①有形固定資産減価償却率は、配水管・給水管の多くを下水道整備時に更新済みであることや、H17に老原浄水場、H24に立岡山北配水池を更新したことなどにより、類似団体の平均値をやや下回る状況である。一方、法定耐用年数を超えた管路延長の割合を表す②管路経年変化率は、S50以降整備の送水管や基幹配水管が順次対象となることでH27以降大きく上昇したが、H29に鼓ヶ原地区の管路更新を進めたことにより若干改善し、当該年度の更新管路の延長割合を表す③管路更新率も上昇、類似団体の平均値を大きく上回った。今後も下水道整備時の支障物件とならなかった基幹配水管も更新時期を迎えるため、計画的に老朽管路の更新を進める必要がある。
全体総括
H26の会計制度の見直し以降、表面的に経営指標は好転しているが、給水収益の低迷等により経常収支比率・料金回収率などは類似団体・全国平均値を下回っており、実質的な経営状況は厳しさを増している。施設等の老朽化対策の必要性が高まる中、キャッシュ・フローの改善(資金確保)が喫緊の課題である。人口減少による収益低下や施設・管路の更新・規模の適正化などの諸問題に対応し、持続可能な経営と安全・安心な給水を維持するためには、H27策定の管路更新計画や、H29に策定した水道ビジョン・経営戦略に沿って着実に事業を実施・推進することが肝要であり、その進捗に不可欠な人材・財源の確保を最重要事項として取り組み、健全経営と財務基盤の強化に努めなければならない。