地域において担っている役割
国保京丹波町病院は、昭和30年5月の開設以来、開業医のいないこの地域のかかりつけ医的な役割を担っており、病床機能を有し、救急対応や公衆衛生活動を提供し地域医療を守り続けている。また、在宅医療も推進し、医療・介護・保健・福祉を継続的かつ一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の拠点病院の役割を担い、地域住民のくらしを守っている。(本分析には国保京丹波町病院と町直営の3診療所が含まれるが、病院が唯一、病床を運営し、会計規模においても8割以上を占めるため、全体として、主に国保京丹波町病院の分析となっている。)
経営の健全性・効率性について
昨年度、患者数の急回復を達成した入院事業は今年度も病床利用率を昨年度水準で維持し、下落した類似病院平均値にも迫った。一方、外来事業は患者数が対前年度比16.1%の大幅減となった。収益面では、入院では昨年度に続き内科常勤医師が2名と内科専攻医1名の体制が患者確保に繋がったことと、2025年問題や地域的ニーズに応えて導入した地域包括ケア病床の稼働向上により、患者一人一日当たりの入院収益が対前年度比で1.6%増の27,055円まで伸びたことも寄与した。一方、外来では新型コロナウイルス感染症の影響により、患者数が令和2年1月から対前年度割れをはじめ今年度は年間通じて割り込み続けた結果、対前年度比5.7%の大幅な収益減となった。費用については依然として人件費のウェイトが大きいが、昨年度の96.9%から更に改善し91.7%となり、対照的に大幅に上昇した類似病院平均値に近づくことが出来た。また、人件費に加え薬品費削減にも注力し、嵩んだコロナ対策経費は国府の補助金を活用することで軽減することが出来た。この結果、経常収支比率は平成28年度の水準まで大きく前進し、100%にあと少しというところまで迫ることができた。新型コロナウイルス感染症で先が見通せない中、今後も常勤医師の確保を維持し、患者数の増加と職員給与費等経費の削減に注力しないといけない。
老朽化の状況について
取得価格の全体に占める割合の多きい国保京丹波町病院の建物は平成16年に新築した鉄筋コンクリート造のため、耐用年数が長く有形固定資産減価償却率は低い水準である。一方、医療機器が多くを占める器械備品減価償却率が毎年上昇しているのは、高額な機器を修繕しながら少しでも使用期間を延ばして経費の節減に努めているためである。結果、1床当たり有形固定資産の額は緩やかに償却が進み、類似病院平均値と同程度となった。
全体総括
コロナ禍にもかかわらず、入院収益を、急回復した昨年度並みに維持できたことは大きな成果であった。その要因は昨年度において医師確保の努力が実り、国保京丹波町病院に内科常勤医師2名と内科専攻医1名の体制を確保出来たことにより病病、病診、介護系施設との連携が円滑に進んだ結果、病床稼働率を昨年度水準に維持出来たたためである。また、地域包括ケア病床の稼働が更に上がったことにより入院単価も上昇したことが大きい。入院事業には施設基準に沿った人的な医療資源を多く投入していることから、病床稼働率や入院収益の上昇が経営改善に直結することになる構造だが、その結果が形となって表れた。一方、外来患者数の下落は1年通じて回復することが出来なかった。引き続き、医師確保に努力し、経費節減に努めることで、新公立病院改革プランに沿った健全経営に取り組んでいく。