地域において担っている役割
尾鷲総合病院は、人口減少が続く東紀州地域の中核病院として、また紀北地区唯一の公立病院として、・365日24時間体制での救急患者の受け入れ・民間病院では不採算となる小児・周産期医療の提供・アンギオやMRIなどを活用した高度医療の提供・災害拠点病院としての受け入れ体制の構築などを行っており、地域医療の中心として住民の健康を支えています。
経営の健全性・効率性について
経常収支比率は、H26以後は類似病院平均値を上回っていますが、これは経営安定化のための基準外繰入が行われたためであり、その分を除くと経常赤字となっています。今後も人口減少による患者数の減少が見込まれるため、経営状況は年々厳しいものとなることが予想されます。病院の本業を示す医業収支比率は、類似病院平均値及び全国平均を上回っていますが、H27以後は減少傾向となっています。病床利用率は、類似病院平均値を上回っておりますが、漸減傾向にあり、入院収益についても減となっています。患者1人1日当たり収益は、外来は類似病院平均値を約3,500円上回っているものの、入院は約15,000円下回っているため、入院収益の増収対策としてH31から療養病棟を地域包括ケア病棟に転棟する予定です。
老朽化の状況について
尾鷲総合病院の資産のうち、昭和44年に完成した外来棟は48年以上が経過し、また平成8年度に完成した入院棟は21年以上が経過しているため、年々資産価値が減少しています。有形固定資産減価償却率は、類似病院平均値を約22ポイント上回るなど、全体的に老朽化が進んでいるといえます。また、器械備品減価償却率についても経営状況が厳しいことから、老朽化した器械備品を更新よりも修繕で対応することが多く、類似病院平均値より約11ポイント上回っています。1床当たり有形固定資産は、過去5年間はほぼ同額となっていますが、類似病院平均値が年々上昇しているため、他病院より投資額は抑えられています。
全体総括
H29は、医業収益が減少したことにより、前年度の黒字から一転赤字決算となりました。経常収支比率については、一般会計から経営安定化のための基準外繰入金が含まれているためであり、その分を除くとさらに悪化します。また、医療圏人口の減少などにより、病床利用率が年々減少傾向にあることや、入院患者1人1日当たり収益が類似病院平均値の約2/3の収益となっていることから、今後、本業である医業収益が減となることが見込まれ、新公立病院改革プランに基づく取組みが重要となってきます。現有資産については各指標からもわかるとおり、全体的に老朽化が進んでいることから、今後、更新が必要な医療機械等が増えることが予想されるため、財政状況が厳しい中でも計画的に更新していく必要があります。