経営の健全性・効率性について
給水収益等で維持管理費や支払利息等の費用をどの程度賄えているかを表す”経常収支比率”は100%を超えており、収支上は黒字で累積欠損金は生じていないようにみえる。しかし、これは長期前受戻入を収益計上した影響であり、純粋な営業収益では損失を生じている。この要因となるのが、給水に係る費用を給水収益でどれだけ賄えているかを表す”料金回収率”である。今年度初めて、損益の基準となる100%を上回ったが、これは平成29年度から31年度までの3年間限定で上伊那広域水道企業団からの受水費が約10%減少したことによることが主因である。そのため、100%を上回るのは一時的な現象であり、平成32年度から再び100%を下回り、供給単価(水道料金)より”給水原価”の方が割高な状態になることが確実である。短期的な債務に対する支払能力を表す指標である”流動比率”は基準である100%を上回っているものの年々悪化している。給水収益に対する企業債残高の割合である”企業債残高対給水収益比率”は類似団体と同様に減少傾向にある。なお、平成26年度からの値が急激に上昇しているのは平成26年度の料金引下げ改定の影響である。施設の利用状況や適正規模を判断する指標である”施設利用率”は、年間総排水量の増加に伴い、施設利用率が前年比1.5ポイント増加している。これは、大口使用者の水需要の増によるもと考えられる。今後、人口減少による給水量の低下が顕著となればダウンサイジングなどの検討が必要となる。給水収益に直結する”有収率”は前年に比べ減少しており、これは平成30年度にアセットマネジメントを策定予定であり、それまでは効果的な管路更新が進んでいないため、漏水等の影響によるものと考えられる。給水収益の向上には有収率の改善が必須である。
老朽化の状況について
”有形固定資産減価償却率”は若干の増加傾向を示している。これは取得した資産の減価償却が毎年進んでいることを示しており、時間の経過とともに資産の老朽化が進んでいることがわかる。一方で法定耐用年数を超えた管路延長の割合を表す”管路経年化率”は横ばいでありゼロに近い。これは、平成30年度にアセットマネジメントを策定予定であり、この結果を待って、管路の更新計画を踏まえた整備計画の見直しを行い、経営戦略のローリング・水道料金の適正化と併せ、財政的な見通しと裏付けを得てから管路更新を実施していく予定のためである。このことより今後老朽化が進行し更新時期を迎える管路が一気に増加することが推測できる。
全体総括
今後耐用年数に達し更新時期を迎える管路が一気に増える状況が考えられることからも、事業費の平準化を図りつつ財源確保や経営に与える影響を踏まえた上で計画的かつ効率的な管路更新に取り組む必要があり、経営戦略に従って平成30年度にアセットマネジメントを策定予定である。これにより漏水等が減少し有収率が上昇することで給水収益の改善が見込まれる。【昨年度からの取組・結果・課題】経営基盤の強化を図るため、営業費用の見直しを行ったところ、H29は給水原価(受水費)が前年比▲1,400万円となり、経営改善に大きく寄与した。しかしながら、これは一時的なものとみられるため、料金回収率を向上させ、将来にわたってサービスの提供が安定的に維持できるよう引き続きコスト削減に取り組み経営基盤を強化してまいりたい。