経営の健全性・効率性について
多摩市では、下水道普及率が99.99%と高い水準に達しており、下水道施設(下水道管やポンプ施設等)の新たな設置工事はほとんどなく、すでに設置された施設の維持管理業務が中心となっている。そのため、平成14年度以降、新規施設を建設するための財源とする企業債の借入れは行っておらず、過年度に借り入れた企業債の残高及び元金・利息の償還額が年々減少している。これにより、1㎥あたりの汚水処理費(使用料で回収すべきとされる汚水処理に要した経費、企業債元金・利息償還金も含まれる)に係るコストを示す⑥汚水処理原価は、減少(コスト削減)傾向にある。コスト削減の実現により、汚水処理費に対する使用料収入の割合である⑤経費回収率は、人口減少等により使用料収入が減少傾向にあるなかにおいても、100%超の高い水準を維持することができている。以上から、単年度の収支を示す①収益的収支比率は、黒字であることを示す100%を超え、安定した経営状況を維持している。発生した余剰金については、将来発生する施設更新投資等の財源として確保している。なお、平成27年度決算における①収益的収支比率の減少は、従来、収益的収支に計上することとされていた建設改良費に直接充当する雨水処理負担金が、平成27年度決算から資本的収支に計上することとされたことによるものであり、事業実施内容の変化によるものではない。
老朽化の状況について
多くの下水道施設は、昭和43年に事業着手した多摩ニュータウン区域を中心に、短期間に集中して整備が行われた。そのため、下水道管総延長のうち、設置後30年を超えるものが平成27年度末時点で約8割を占めており、今後、標準的な耐用年数50年を超える施設が急増することとなる。当該年度に更新した下水道管等の割合を示す③管渠改善率は、類似団体の平均値を上回ってはいるが、高い水準であるとは言えない。主な下水道管の維持管理については、汚水管は10年、雨水管は15年サイクルにより、計画的なテレビカメラ・目視調査を行い、問題箇所が発見された場合は、その状況に応じて、道路掘削による取替工事、更生工事又は部分補修等の対応を行っている。
全体総括
現在、非常に安定した経営状況を保っているものの、下水道施設の大量更新時期を目前に控えており、大々的な改修を行うには、莫大な費用を要することとなる。大量更新に要する財源を確実に確保するため、現在の経営状況を維持し、将来負担に備え、さらなる基金の積み増しを図る。また、将来負担を正確に把握し、計画的な施設更新を実現するため、現金収支のみを記録する官公庁会計から、負債や資産状況の把握が可能な公営企業会計への移行に取組む(平成29年度移行予定)。さらには、民間事業者を最大限に活用した委託形式の導入を検討し、さらなる経営の効率化を図ることで、将来にわたり安定的に経営できるための基盤の構築を目指す。