経営の健全性・効率性について
経営の健全性については、一般会計からの補助金に頼るところが大きく、①経常収支比率は100%を上回っているものの、⑤経費回収率が32.91%と、100%を大きく下回っている。⑥汚水処理原価は、平均値と比べても格段高いわけでもなく、使用料を低く設定していることが一因であり、今後もこの傾向は続くと見込んでいる。特定地域生活排水処理事業単独では、使用料収入が少なく、維持管理経費や資本費を賄いきれず、③流動比率は92.13%となっているが、青梅市下水道事業では、公共下水道事業を合わせて運営しており、公共下水道事業より生じる資金によって、資金運用を行っている。経営の効率性については、⑧水洗化率は100%となっているものの、全体計画人口のうちの水洗便所設置済み人口は35.95%にとどまっている。また、⑦施設利用率は、平均値よりやや低い50.15%となっている。これについては、市が施設管理を引き継いだ私設の浄化槽が、古い基準で設計されており、使用人数に対して過剰な処理能力を有している場合があること、また、計画地域が面積当たりの人口が少ない地域であり、最小規模の浄化槽を設置しても、使用者数が処理能力より少ない場合がある(利用者2人に対し、5人分の処理能力を持つ浄化槽を設置せざるを得ない場合など)ことなどによるものである。また、使用料単価の水準が低いこと、利用者数に比して処理能力の高い浄化槽の設置をせざるを得ない事例があることなどから、④企業債残高対事業規模比率は、平均値と比較しても非常に大きくなっている。整備計画通りに整備が進んでいないため、健全性・効率性を高めるためにも、引き続き整備を進める必要がある。そのため、⑦施設利用率や④企業債残高対事業規模比率は、今後も現状と同様の状況が続くと見込んでいる。
老朽化の状況について
当市の特定地域生活排水処理事業は、平成27年度より開始しており、事業開始後、あるいは開始に合わせて、市が設置した浄化槽については、設置後10年もたっておらず、①有形固定資産減価償却率も低くなっている。一方、もともと私設されていた浄化槽について、青梅市が譲渡を受け、引継ぎ公設浄化槽として整備しているものが、全体の浄化槽の半数を超えている。譲渡された浄化槽は、ばらつきはあるものの、設置から30年近くたっているものもあり、老朽化が進んでいる。経営戦略にそって、計画的な更新を考える必要がある。
全体総括
特定地域生活排水事業については、使用料単価が、資本費・維持管理経費に見合わない、低い水準となっている。今後も、老朽化した浄化槽の更新や、全体計画区域内の浄化槽設置が必要であることを考えれば、資本費・維持管理経費が下がることは考えづらい。ただ、浄化槽の設置・整備を進めることで、使用料の増収にもつながると考えている。経営の健全性を向上させるためには、適切な使用料を検討する必要があると思われるが、公共下水道事業と合わせて運営していることから、市の下水道事業全体としての判断が必要となる。経営戦略にそって、浄化槽の整備改修、適切な使用料の検討を進めていく。