経営の健全性・効率性について
経常収支比率は,給水人口の減少に伴う給水収益の低下や補助金の削減により,今後も低下の傾向が予想される。工場の撤退や宿泊施設の廃業等により,給水人口の減少や人口密度の低下が進んでいることから,給水にかかる費用を料金収入で賄うことが出来ず,千葉県水道事業総合対策補助金や市町村補助金といった一般会計からの繰出金に依存せざるを得ない状況にある。このことが,料金回収率の低さの要因となっている。また,施設利用率は平均値より高いものの,有収率は平均値より低く,漏水等の料金収入につながらない水量が多いことを表している。このことから,当企業団では給水原価を下げるため,潜在漏水量が多いと思われる区域の分析や,漏水が多発している老朽管を優先して更新するなど,有収率向上を目指し施策を実施している。さらに,適切な人員の配置や施設維持費についても見直しを進めているところである。累積欠損金が発生した理由は,受水費,修繕費,薬品費,減価償却費等の費用増加に伴い経常損失が発生したたためである。また,平成30年4月1日に水道料金改定(平均改定率5%)を実施したが,人口減少及び予算時には予測できなかった台風15号の影響により有収水量が予測以上に減少,水道料金収入も減収となった事も要因である。なお,累積欠損金比率については,平成元年度に純損失が発生したが,実際には,令和2年10月議会での決算認定後に利益積立金による欠損補填処理を行った。平成30年度に,料金改定を実施し,営業収支等は一時的に改善したが,台風被害及び人口減少により,有収水量の減少が続いている状況である。このように,当企業団の水道事業を取り巻く状況は,厳しい状況であり,より一層の経常費用削減に努める必要があると考えている。
老朽化の状況について
管路経年化率が,平均値に比べて著しく高いことから,当企業団における管路老朽化の度合は,非常に高いと考えている。また,有形固定資産減価償却率についても平均値と比較して高く,かつ,増加傾向により,管路のみならず,施設等についても老朽化が着実に進行していると捉えている。これらのことは,有収率向上や施設の強靭化を踏まえて,更新が急務であると認識している。当企業団としては,漏水多発地区や無効水量の多い区域の老朽管等を優先的に更新しつつ,老朽化更新計画にのっとり,老朽化の更新を計画的に実施する方針です。人口減少及び新型コロナによる影響により,更なる水道料金の減収が想定される厳しい財政状況であるが,限られた予算及び人員の中で老朽管の更新を効率よく進める必要がある。更新計画にある管路を基本ベースとし,管路の重要度,道路改良工事及び他の占用工事等の状況,漏水多発地区等を総合的に判断し,より重要度が高く,費用対効果の高い管路から老朽管更新事業を実施していく方針です。また、浄・配水場施設の統廃合による管路の変更(新設・廃止)も含め、配水管網の水理解析による適正管径の採用(増・減口径)など、施設整備計画との整合を図りながら合理的な配水管網計画を立案し、改良・更新事業を引き続き実施する。
全体総括
ここ数年の工場の撤退や宿泊施設の廃業等による産業構造の変化に伴う人口減少により,給水収益は大幅に落ち込んできた。今後も人口減少から給水収益は,さらに逓減していくことが予想される。また,施設の老朽化に伴い,有収率についても低下していくことが考えられる。そのため,当企業団は,将来にわたって安定的な事業継続をしていくため,中長期的な視野に立った経営の基本計画である,水道事業経営戦略を平成28年度に策定している。経営戦略にのっとり,経常経費の削減を行いながら,漏水の多発する地区や無効水量の多い区域の老朽管等の更新を前倒しで実施するなど,適切な管路更新を継続して行っていく方針である。また,施設の維持管理費を抑えるため,休止中の施設については,水需要の動向を見ながら適宜縮小,廃止を計画的に進めて行く方針である。