地域において担っている役割
当院は、市の中心から西方に約10キロメートル、国道410号線と主要地方道鴨川保田線が交差する交通の要所に位置しているが、中山間地域のため集落が山間地に点在し、高齢化が進んでいることから、高齢者等の交通弱者に対する交通手段の確保が必要な地域となっている。また、当院から10キロメートル圏内に医療機関はなく隣接する君津市、南房総市、鋸南町の市域を含む中山間地域唯一の二次救急指定医療機関(千葉県救急告示病院)となっていること、及び鴨川市地域防災計画において、当院は災害時の応急救援活動における後方医療施設としての役割等を担っていることから、救急医療を含め引き続き災害時医療における役割を担っていく必要がある。
経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は、入院患者数の増加に伴い入院収益が増加したものの、外来収益及び一般会計からの繰入金が減少したため、前年度と比較して2.0ポイント悪化した。②医業収支比率は、地域包括ケア病床の増床により、入院収益が増加したため、前年度と比較して6.1ポイント改善した。③累積欠損金比率は、入院収益の増加等により、当年度純利益23,149千円を計上することができたため、累積欠損金の一部を解消し、前年度と比較して4.2ポイント改善をしている。④病床利用率は、入院患者数が前年度と比較して1,682人増加したことから6.4ポイント増加し67.1パーセントとなった。目標とする病床利用率70パーセントには届かない状況であるが、今後、地域包括ケア病床を増床し、病床利用率の向上を図る。⑤入院患者1人1日当たり収益については、地域包括ケア病床を増床したことにより、入院収益が増加したため、前年度と比較して3,243円増加した。⑥外来患者1人1日当たり収益については、検査件数及び在宅診療件数の割合が増えたにより若干増加している。⑦職員給与費対医業収益比率については、入院収益増加に伴い、医業収益が増加したため、4.0ポイント改善した。⑧材料費対医業収益比率については、外科がないことなどから癌治療(抗がん剤など)がなく、透析等もないことから比較的低い水準となっている。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率については、器械備品(主に医療機器)は、延命化を図りながら、ある程度の年数で更新を行っているが、建物などの更新や改修は今まで実施していないことから高い水準となっている。②器械備品減価償却率については、ある程度の年数経過で更新を行っているものの、延命化を図りながら、法定耐用年数(減価償却年数)を超えて使用しているものも多々あるため比較的高い水準となっている。③1床当たり有形固定資産については、延命化して使用できる医療器械等については、法定耐用年数を超えて使用していることや建物等の更新・改修を行っていないため有形固定資産の額が少ないことから、平均値及び類似団体の数値より低くなっている。
全体総括
収入においては、一般会計からの繰入金は減少(対前年度比△62,857千円)したものの、地域包括ケア病床を増床したことにより、入院患者数が増加(対前年度比1,682人)し、それに伴い入院収益が増加(対前年度比91,235千円)した。また、費用においては、病床稼働率の向上を図るために職員数を増加したことに伴い給与費が増加(対前年度比25,456千円)したが、収入が上回ったことにより、当年度純利益23,149千円を計上することができた。入院患者数及び入院収益は前年度と比較して増加したものの、病床利用率は継続して70パーセントを下回っている状況であるが、平成31年2月から地域包括ケア病床を8床導入し、その後、令和元年5月に16床、同年12月に24床、令和2年2月に32床と段階的に増床している。これにより、前年度と比較して病床利用率が6.4ポイント向上した。令和3年度において、地域包括ケア病床数を52床まで増床し、病床利用率の向上を図る予定である。また、建設事業として、新病院建設事業を令和元年9月14日着工、令和3年2月28日竣工の予定で実施していることから、令和元年度において、建設改良費が前年度と比較して342,140千円増加した。令和2年度においても、引き続き建設改良費の増加が見込まれるため、地域包括ケア病床の増床等による医業収益の確保及び一般会計と協議し補助金等の確保を図りながら経営基盤の強化に努める必要がある。