経営の健全性・効率性について
①公営企業法適用後の初年度である令和2年度の収益的収支比率は、100%を超え黒字を確保した。しかしながら、一般会計からの繰入が総収益の4割を超えており、繰入金に依存した状態であるため、収益性を考えた効率的な整備と接続促進活動により接続率を向上させ、使用料の増収を目指す必要がある。③流動比率は、類似団体と比較して高い水準にはあるものの、100%を下回っており、支払能力を高めるための経営改善を図っていく必要がある。④企業債残高対事業規模比率は、類似団体平均を大きく下回った。ただし、今後、事業開始当初に敷設した管渠の更新が必要になってくることから、更なる経営改善が必要である。⑤経費回収率は、100%を達成し汚水処理に係る費用の全てが使用料で賄えている状況であり、類似団体と比較しても高い水準にあると言える。⑥汚水処理原価は、類似団体平均を下回っているが、今後も投資の効率化や有収水量増加のための取組など経営改善が必要である。⑦本町の下水道は最終的に流域下水道(県の施設)に接続しており、下水の処理は流域下水道の処理場で行っているため、施設利用率はない。⑧水洗化率は、類似団体と比較して低い状態にある。改善するには費用対効果の高い地域を優先的に整備するとともに、更なる接続促進に努め、水洗化率の向上に取組む必要がある。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率は、当町の供用開始後経過年数が令和2年度時点で20年であり、法定耐用年数に近い資産が少ないことから、類似団体平均と比較して低い数値となっている。しかし、今後事業着手当初に敷設した管渠や受贈した民間開発管渠の修繕や更新が必要になってくるため、更新費用の増加に備えて財源の確保に努める必要がある。②管渠老朽化率は、法定耐用年数を経過した管渠がないため0%となっている。しかしながら、事業着手当初に敷設した管渠は法定耐用年数50年のうち25年以上が経過しており、受贈した管渠で35年以上経過しているものもあるため、計画的に管渠の点検・修繕など予防保全を実施する必要がある。③管渠改善率は、令和2年度は管路調査のみで改築・更新工事を行っていないため、0%となっている。令和2年度の管路調査結果をもとに、令和3年度から計画的に管更生工事を進めていく。
全体総括
本町の公共下水道事業は令和2年度から公営企業会計に移行し、今回が法適用企業として初めての経営比較分析となる。各指標から経営状況を分析したところ、経営の効率性は類似団体と比較しても概ね高い水準であると言える。多数の接続が見込める地域を中心とした効率的な整備を実施するとともに接続促進活動に取り組んでいるため有収水量・使用料収入ともに順調に増加しているが、その一方で収益の大部分を一般会計繰入金に依存している状態であることから、今後老朽化対策費の増大により財政状況が悪化しないよう使用料水準の適正化も含め更なる経営改善が必要である。今後の取組としては、公営企業会計移行に伴い、作成した財務諸表を活用し財政マネジメント向上を図るとともに、固定資産データを活用したストックマネジメント計画策定の検討に着手する。将来的には、策定したストックマネジメント計画に基づいて改築更新費用に充てられる国庫補助金等を活用しながら、計画的かつ効率的な更新・維持管理を行っていく。