地域において担っている役割
長崎県精神科医療の拠点病院として、精神科救急患者に24時間・365日対応する精神科救急医療センターの運営の受託、児童・思春期専門の病棟の開設、高度専門医療としての司法精神医療を行う医療観察法病棟の設置及び難病疾患のための電気けいれん療法(ECT)センターの新設など、民間医療機関では対応困難な医療を提供している。また、精神科医師の離島地区への派遣、精神科医師確保などの取組に努め、地域の精神科医療の維持・発展に貢献している。
経営の健全性・効率性について
「①経常収支比率」、「②医業収支比率」は、例年平均値を上回っており、「③累積欠損金比率」はゼロを計上している。要因としては、精神科救急医療、児童・思春期精神科医療及び司法精神医療などの実施により、「⑤入院患者1人1日当たり収益」、「⑥外来患者1人1日当たり収益」を、高水準で計上していることが挙げられる。「④病床利用率」は、経年ほぼ同水準で推移しているが、平均値より高い数値を維持している。「⑦職員給与費対医業収益比率」は、経年改善傾向にあり、平成26年度以降は平均値を下回る数値を計上している。「⑧材料費対医業収益比率」は、平均値が減少傾向にあるにも関わらず、当院の実績は例年ほぼ同水準で推移しているため、共同購入事業など、材料費の削減に積極的に取り組み、改善する必要がある。
老朽化の状況について
建物は昭和60年5月に建設されてから、平成28年度末で31年を経過している。(医療観察法病棟は平成20年度に建設。)主に建物の減価償却に伴い、「①有形固定資産減価償却率」は、経年、増加傾向にある。なお、建設工事に伴い整備した構築物、建物付属設備及び機械備品などは、大部分が耐用年数を過ぎ、残存価格のみとなっている。平成26年度の会計制度見直しに伴い、償却不足分の減価償却費を計上したため、機械備品を含む有形固定資産の減価償却率は平成25年度から平成26年度にかけて大きく上昇している。会計制度見直しにより、有形固定資産全体の償却率が平均値を上回っていること、及び経年比較において数値が増加傾向にあることから、老朽化が進んでいると認められるため、計画的に施設の更新・修繕を検討・実施する必要がある。
全体総括
長崎県の精神科第3次救急医療を中心に、精神科専門機能に特化し、地域の医療機関等との連携強化及び離島地域の精神科医療維持のための支援強化など、長崎県精神科医療の中核を担う拠点病院としての機能を備えてきた。経常収支比率及び医業収支比率については一定の健全性・効率性が認められており、平成28年度には自治体立優良病院の総務大臣表彰を受けることができた。しかし、今後は施設の老朽化に伴う設備の更新・修繕など、病院運営に要する費用の増加や人材確保の厳しさが見込まれるため、これまで以上に効率的な病院運営体制づくりに努め、収入増加・人材確保対策と経費の削減・抑制対策を進めることにより経営基盤を強化し、さらなる収支の改善を目指してまいりたい。