経営の健全性・効率性について
当市の公共下水道事業の経営状況は、①収益的収支比率は100%未満の状況が続いており、収益が不足している。徐々に上昇していたが、平成28年度から下降している。これは使用料収入は増加しているものの、地方債償還金が増加しているためである。平成31年度までは地方債償還金は増加し続ける見込みである。類似団体と比較して⑤経費回収率は低く、⑥汚水処理原価は類似団体よりやや高くなっている。また、⑧水洗化率はやや低くなっている。⑤経費回収率が悪い原因は、使用料収入が事業規模に対して少ないためである。使用料収入を分析すると、平成29年度末現在の使用料単価(1㎥の水を流すことで発生する使用料)は90.2円である。これに対し、⑥汚水処理原価は183.5円、そのうち維持管理に要する費用(1㎥の水を処理するのに必要な費用等)は99.0円で、使用料単価よりも8.8円高くなっており、その差額は一般会計からの繰入金で賄っている。⑥汚水処理原価のうち、管渠の建設時に借りた企業債の償還について全てを使用料で賄うのは難しいと考えており、一般会計からの繰り入れが必要だと考えている。しかし、維持管理に要する費用のみでも使用料単価と8.8円の差が生じている。そのため、まずはこの差を無くす必要がある。⑧水洗化率が昨年度と比較して低くなっている原因は、供用開始1年目の地区の接続率が低いためである。接続率が低い地区で重点的に接続促進訪問を行う必要がある。
老朽化の状況について
当市の公共下水道事業は、地方公営企業法を適用していないため、減価償却の概念がない。そのため、①有形固定資産減価償却率と②管渠老朽化率は値を算出することができず、明確な数値としての老朽化具合は不明である。しかし、当市の下水道事業は平成元年度から事業を行っており、事業開始から30年足らずしか経過していないことから、老朽化は比較的進んでいないと思われる。ただし、平成初期に布設した管渠の中にはひび割れ等の不具合も見られており、今後、そのような管渠はどんどん増えていくと見込まれる。今後は、供用開始区域の拡大だけでなく、既存の管渠の補修・改築も必要になってくる。
全体総括
当市の公共下水道事業の経営状況は、決して良いとは言えない。上記のとおり、使用料収入が低いことで、必要な費用が賄えていないことが大きな要因である。現在は、事業開始からまだ日が浅いため、管の補修等の費用は大きくないが、今後10年20年と経過するにつれて補修費用が増加し、その分維持管理に要する費用が高くなる。すると、ますます使用料単価との差が乖離してしまう。今後の課題は、汚水処理原価を下げること、使用料収入を上げることの2つである。汚水処理原価については、水処理を県の浄化センターで行っているため、その維持管理費を当市の努力で下げるのは難しい。そのため使用料収入を上げることが必要である。経営戦略については公営企業会計法を適用した後の平成32年度に策定予定。