地域において担っている役割
病院群輪番制病院として医療圏内の救急医療の一翼を担うとともに、医療圏の急性期医療やがん診療等の高度医療、公立病院として民間病院では限界のある精神・結核・感染症・認知症疾患等の政策的医療を堅持している。とりわけ、新型コロナウイルス感染症に対しては、第2種感染症指定医療機関として、高岡医療圏での中核的役割を果たすべく患者の受入に努めている。また、地域医療支援病院として、地域の医療機関と連携・協力を図ることで、地域の医療の質向上に努めている。
経営の健全性・効率性について
経常収支比率では、前年度比で6.9ポイント増加した。これは、新型コロナ患者受入対応等に係る補助金収入を計上したことによるものである。医業収支比率については、前年度比で9.1ポイント減少した。新型コロナの影響により、患者数が減少し、医業収益が減少した一方で、対応に係る経費が増加したことによるものである。累積欠損金比率は、平成29年度からの収支黒字の継続により累積欠損金は減少しているものの、医業収益が減少したことにより、前年度より4.6ポイント上昇した。今後も収支改善を図り黒字経営を継続するため、医業収益の獲得に努めつつ、地域医療構想との整合性をとりながら、さらなる医療の質の向上と経営の安定に取り組む。病床利用率については、新型コロナ病床を確保していることや新規入院患者が減少したことにより、全国平均を下回ったと考えている。今後も新規入院患者の獲得に向け努めていく。入院患者1人1日当たり収益は、新たな診療報酬上の加算の取得等により増加した。外来患者1人1日当たりの収益は、放射線治療医の専従配置による加算の取得や新型コロナの影響による軽症患者の減少等により増加した。職員給与費対医業収益比率では、退職者数の減少による退職給付費の減等により給与費自体は減少したものの、医業収益が減少したため、前年度比で増加した。今後も適正な人員配置に努めていく。材料費対医業収益比率については、患者数減少に伴い、診療材料費や薬品費も減少したことにより、前年度並みの比率となった。今後も価格交渉、使用節減等により材料費の削減に取り組んでいく。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率、器械備品減価償却率ともに、新型コロナウイルス感染症対応のためなどの新たな器械備品の導入や、電気設備や排水設備等の改良工事の実施により、昨年度より低下しているものの、依然として全国平均、類似団体との比較で上回っている。これは、平成12年度に建設した病院全体分や建設と同時に導入した医療機器等の老朽化が進んでいることを示しており、今後はこれらに対する修繕も増大することが予想され、収支面では費用の増加が懸念される。1床当たり有形固定資産については、前年度から病床数に増減はないものの、古い器械備品の除却があり、減少した。今後も当院の財政規模を考慮し、施設等の投資計画の見直しを適切なタイミングで行っていく。
全体総括
収支状況については、医業収益では、新型コロナの影響により、入院・外来収益ともに大幅に減少となる一方、医業費用においても、経費が増加し、医業収支は大幅に悪化した。しかし、新型コロナ対応に係る補助金の計上により純利益を計上した。収益面では、患者数を、紹介・逆紹介を通じた新規入院患者の獲得等により回復させるとともに、患者1人1日当たりの収益を増加させ、医業収益の増加を目指していく。費用面では、今後も継続して費用削減について検討していく。一方で、有形固定資産等の減価償却率は全国平均、類似団体比較でもはるかに高いポイントとなっており、今後は老朽化による修繕費の増加も懸念される。計画的な修繕の実行により費用を抑制しつつも、機器等の継続的・計画的な更新も実施し、当院の医療の質の維持・向上を図っていく必要がある。新公立病院改革ガイドラインに基づき、令和3年度から令和7年度までの高岡市民病院第V期中期経営計画を策定し、事業を行っているところである。今後総務省が策定する新たなガイドラインの内容を踏まえて、必要に応じて見直しを検討していく。